IT業者から見た「IT導入時に気をつけるべきこと」

株式会社コヤマ・システム
取締役社長 佐野 弘実様

はじめに

2021年中小企業白書の第2章では「事業継続力と競争力を高めるデジタル化」と題して、事業継続力の強化及び競争力の強化に向けた中小企業におけるデジタル化の取り組みについて分析されています。
新型コロナウイルスの感染拡大によりデジタル化の事業方針における優先順位が高まっているアンケート結果があるようにDXに向けて本格的に推進するチャンスであることが伺えます。
しかし、同白書内ではITツール活用が労働生産性と明瞭な関係を持たないアンケート結果があるように、実際の中小企業ではITが導入できていないという声だけでなく、導入したけれども思ったような効果が出ていないという声もあります。

そこで、事例3企業目には実際に導入をサポートしている企業様からお声を頂きました。株式会社コヤマ・システムは「ITによる顧客価値創業支援業」として、31年前から香川県で経営されています。大手から中小企業まで様々な業種、業態のITやシステムのサポートをされてきています。
佐野社長は香川県のデジタル化推進戦略委員を為されており、実際にたくさんの企業様を担当した経験からIT化に伴う準備や考え方についてお話しくださりました。  

日本の中小企業でITが進まない理由

日本の中小企業のIT導入

ITが進まない理由の一つにIT人材の育成が遅れていることが上げられます。IT人材とはITに関するマインドとリテラシーを高めることを指します。
アメリカと比べた場合、アメリカはほとんどの企業でITに関する部署がありますが、日本ではない為に7割程度外注をしています。
その数値からもわかるように人材がいないことが一つの要因です。


依頼をするときに困る事とは

進まない理由のもう一つとして佐野社長が担当個客100社へのアンケートの結果、
1、料金が高い、相場が分からない 44%
2、思った通りのものができない 32%
3、どこに頼めば良いかわからない 21%
という結果が出ています。

日本の中小企業は大手と比べてITの導入が遅れており、それが生産性の悪さにもつながっていると言えます。  

導入している企業の問題点

IT化を導入している企業に多い課題が、マルチベンダー問題です。マルチベンダー問題とは、様々なシステムを別々の業者で作成しているために連動していないという事です。それにより、一つひとつの効率が上がっていてもより以上の効果を得ることが出来ません。
また連動させるために人の手を使ってコストがかさむケースもあります。  

中小企業がITで解決したい共有課題

守りのITと攻めのIT

IT投資には「守り」と「攻め」があります。佐野社長は守りからすることをお勧めされています。それは守りをせずに攻めをすると。社内が混乱してしまいます。また攻めは成果が出るまで時間がかかります。
守りでコストを削減して、その分を投資することが一つの方法です。  

3つの課題

中小企業がIT投資する場合解決したい内容として「探す」「つくる」「見える」というものです。
探す:社内にある資料やデータを探す
つくる:報告書や提案書などを創る手間を減らす
見える:社内やデータの見える化
この3つを通して属人的な人の暗黙知をIT化することが重要です。特に優秀な社員さん、長年働いてくださっている社員さんが定年退職するまでに暗黙知を引き継いでいく必要があります。


システム導入時、依頼時の注意点  

依頼先について



相談しやすさ 
価格 
開発力  おすすめ 
オフィス事務機 
相談しやすい 
パッケージ品 
比較的安価 
専門外 
汎用的な業務 
会計・事務 
大手IT企業
難しい 
数百万~数千万  金額に応じて  大規模システム 
地域中小IT企業 
難しい 
数十万~数百万  開発専門  業務改善 
新事業開発 
地域IT相談窓口 
取引銀行 
相談しやすい 
相談先に依存  相談先に依存  やりたいことが不明確な段階
社内、社外の 
ITに詳しい人
とても相談しやすい 
かなり安価 人に依存 小規模システム 
短期運用 

5つのポイント  

1、目的はITではないので、依頼をするときは目的を明確にして、具体的に依頼をすることがポイントです。そうしないと価格が高く、高機能で現場が使えないものが出来て今います。

2、何を解決したいのかを明確にすることが重要です。今の業務をIT化するだけではコストがかかるだけでなく、現場の業務が増えるだけで余計にコストがかかります。

3、一気に全部やると使用者である現場への負担が甚大で、上手く導入できません。またITに対して嫌いになりそこから進まなくなります。

4、高いものがいいものではありません。高機能がいいものではありません。自社の状況に合わせての導入が不可欠です。

5、攻めのIT、戦略的IT活用は現場に任せるのではなく経営者、経営幹部が責任を持つ必要があります。3年後5年後を考えたシステム開発をしてノウハウのIT化をすることで、他社にないものを創れます。  

まとめ

中小企業にIT導入を促進している企業様からのお話を頂きましたが、「手段の目的化をしない」という事が上げられます。
ITをする目的は守る為なのか、攻める為なのか、守るにおいても探す為、創る為、見える為、何のためなのかを明確にする必要があります。
その目的に合わせて相談相手を変えたり、担当企業を変えたりする必要があるという事です。
そのポイントを押さえながら自社の生産性を上げるためのIT導入、システム導入をする必要があるという事です。