外食産業のIT導入

株式会社マルブン
代表取締役 眞鍋 明様

はじめに

新型コロナウイルスの感染拡大によって多くの業界が影響を受けています。その中でも飲食業界、観光業界は不要不急の外出・移動の自粛、酒類を提供する飲食店等の休業要請、
それ以外の飲食店は、20時までの営業時間の短縮により非常に大きな影響を受けています。
また19年7月に帝国データバンクが実施した調査によると、非正社員だと飲食企業の80%、正社員では飲食企業の60%以上が「人材が不足している」とそれぞれ回答があります。現在は一時的に解消されている地域もありますが、地域によっては問題を抱えていたり、アフターコロナにおいては、どの地域でも「超人材不足」の時代になると考えられます。

そんな中愛媛県西条市に本社がある株式会社マルブンではITを活用して様々な問題を解決しています。株式会社マルブンは松山以内4店舗を含む6店舗とECサイトを1店舗、イタリア料理が人気の創業99年目の企業です。
コロナウイルス感染拡大で影響を受けながらも、それをあえてチャンスととらえて改善している代表取締役、眞鍋明様から事例の発表を頂きました。  


外食業界の抱える問題  

どの業界にも問題はあるが、その中で眞鍋氏が考えるコロナ以前の課題が下記の7つであります。

1、生産性が悪い
2、労働時間が長い
3、IT化が遅れている
4、古いマネジメントスタイル
5、固定観念が強い
6、利益率が低い
7、求人が難しい

ここに新型コロナウイルスの感染拡大による影響や中食の拡充などの変化にも対応していく必要があります。  

IT化の事例と効果

夜間の仕込みを行うシステム

大きな仕込みを夜行うシステムを構築して誰でも美味しい食事を提供できるようにしています。この一番の目的は働き方改革と生産性の向上であり、時間を効率的に活用することによってお客様に意識を向けられるようにしています。


リテールテック  

小売り(リテール)事業にITやIoTの最新デジタル技術を導入することですが、マルブン様含めて4社のシステムを連動させています。これによって注文をお客様がご自身で行ってくださるために非接触になります。同時にデータとして売上など様々な予測が出てきます。これにより仕込みのロスが減ります。


お掃除ロボット  

掃除はルンバを活用されています。リースなので月1650円で人件費を大幅に削減できます。

サービィ(配膳ロボット)

配膳ロボットはスタッフの少ない店舗で導入されています。月10万円ですが、時給換算400円でお水、料理の配膳と片づけをしてくれます。感染対策でホールスタッフのやる仕事は増えていますが、ロボットで配膳、片付けをしてくれる分接客に力を入れることができます。  

IT化導入のきっかけと決断

導入のきっかけ  

顧客価値の生まないところを機械化、IT化されています。
同時にCSが上がるか、関係性が強化されるか、スタッフが使いやすいか、を考えて導入されています。更にコストが合えばよりいいですし、リースで試して上手くいかない場合にすぐ辞められるメリットがあります。
実際に眞鍋社長がシリコンバレーなど最新技術に触れていると同時に現場からの提案を大事にされています。  

スタッフからの提案に関して

提案に関して「何のためにやるのか」、「どうやってやるのか」を眞鍋社長が問いかけると同時に最近では幹部さん、社員さんが考えて提案されます。
また自分の固定観念を崩してくれる説明によりイメージを出してくれるので、トライアルをしているとのことです。
また提案した人に権限委譲をして任せて、力を発揮してもらっています。

費用対効果

レジシステムは通常の導入費用よりも50万ほど減っています。
運用も月5万ほどですが、スタッフ1名分の人件費を減らすことが出来ています。
またパート採用が難しかったり、パートの時給が上がったりしている状況でロボットは非常に有効とのことです。

これからの経営方針

IT化の中で注意していること

レジシステムの導入により様々なデータ、数値が出てきますが、その中でどの数字をKPIにするのかが重要です。そこが経営能力であり、店長能力であり、成果に大きく影響されます。


経営方針の転換

これからは売上や店舗数を追う経営から、利益確保が重要になってくると考えていらっしゃいます。デリバリーによって顧客は好きな時に好きな食べ方を選べるようになっているからこそ、お店としてはお客様に来店してもらう価値を提供する必要があります。それがお店だから食べられる、お店だからあの人に会える、という価値と話をされています。

IT導入の注意点

IT導入時の注意点として、2つ挙げられています。
一つは現場の使えないシステムになっている事、
もう一つは連動されていないシステムになっている事があります。

またITに全て任せるのではなく、如何に活かすかという姿勢が大事です。
どのデータを活用するかもそうですが、経験を活かしたり、イベント時に自ら予想したりとする姿勢を重要にされています。

まとめ

新型コロナウイルスの感染拡大により大きな影響を受けている印象業界ですが、眞鍋社長は問題解決をされています。それは外部環境が変わる中において、すべてを加速的に変えるチャンスと考えているところが大きいです。
外部環境が変わる中で、お客様も変化を受け入れてくれていると捉えています。

コロナによる新しい問題もありますが、その前の飲食業界にある問題の本質をとらえてコロナ対策と合わせて解決に導いています。その一つの手段としてIT化を推進されています。

様々なシステムがある中で、顧客満足、従業員満足、効率化を実現するというバランスを持ち、まずやってみるという初動のはやさで、厳しい業界の中でも上手くいく会社、お店を創っている印象です。