中小企業の海外進出【株式会社STG】

株式会社STG

株式会社STG
代表取締役社長 佐藤輝明氏


代表取締役社長 佐藤輝明氏

はじめに


2021年11月15日(月)に行われました、Webinar Japan株式会社主催の経営サバイバルダイアログでは「中小企業の海外進出」がテーマでした。3名の実務経営者と1名のコメンテーター、日創研グループ代表田舞が質疑応答や議論をした内容のうちSTG佐藤様にスポットを当ててまとめたレポートです。

株式会社STG【概要】

1975年創業
本社:大阪府東大阪市
マグネシウムおよびアルミダイカスト製品製造されています。BtoBの取引が基本でしたが、コロナウイルス感染拡大を期にBtoC商品も開発、製造、販売とされています。
国内に2工場のほか、2006年香港、中国広東省へ進出後、2011年タイ、2021年マレーシアにも進出されています。
また2019年には東京プロマーケットに上場されています。


海外進出のきっかけ

まず初めに佐藤社長に海外進出のきっかけと目的をお聞きしました?

2000年ごろから家電製品を中心にビジネスの中心が中国に行っていることを強く感じていました。
同じ時期に中国からの留学生がバイトから入社したというタイミングもありました。
そのきっかけで中国に進出しましたが、はじめは非常に小さい規模で行っていました。
タイへの進出は中国への依存度を減らすことを目的に行い、マレーシアはマグネシウム製造だけでなく、別の軽金属であるアルミに本格参入することを目的として行いました。
国内でもM&Aも検討していましたが、コロナの影響でマレーシアに良い会社が見つかり、且つ上場をしていますが、企業規模を大きくするという目的も踏まえて行いました。


海外進出のリスク

海外進出となると日本では起きない問題やリスクがあると思いますが、どのような問題があり、どのような対策が必要だと思いますか?

思いもよらないことがたくさん起こります。受け入れるしかないと思っており、解決する為に日本はこうだから、日本式はこうだ、という考え方の押し付けはうまくいきません。
日本であれば少し他を手伝うこともあると思いますが、海外は職務給なのでそのような仕事を命じるとボイコットや辞められたりしたこともあります。
赴任する人間に対しても海外の人は3年程度で帰るような人の事は聞きません。
だから本当に自分の右腕となれるような信頼できる人に権限を与える必要があると思っています。

中国への進出は?

中国への進出に関してはプラスに捉える方とマイナスに捉える方といらっしゃいますが、佐藤社長はどのようにお考えですか?

日本人だから、日本だからと区別できるという発想では難しいと思っています。
AIはじめ技術力が高まっている中で中国も一つのサプライチェーンに入れる候補だと私は思っています。
新聞やテレビ放送などでいろいろな情報もあると思いますが、大国でのビジネスであればどの国でもあると思って対応しています。
但し、リスクとしてはアメリカが香港ドルペッグ制の仕組みを変えることがあれば我が社にも大きな問題になると思っています。


タイへの進出

タイに進出もされていますが、タイという国でのお仕事に対してどのようにお考えでしょうか?

タイでも貧富の差が大きくなってきています。ただ、タイの食料自給率は200%あり食べることに困るという事は無いようです。
その為にガツガツすることが少なく、何が何でも仕事を続けるという事は無いという国民性だと感じています。そういった苦労は中国とは違って感じています。

タイには毎月麻薬の検査をしています。見つかった場合通報するのではなく更生させるプログラムがあり、その役割を担うのも企業の責任の一つになっています。


COP26の影響

先日COP26もあり環境問題が経営に与える影響も大きくなる中で、どのようにお考えでしょうか?

我が社も時流の流れとしてSDGsの取り組みをしています。その国毎の施策に合わせて海外でも合わせて行っていく事は基本として考えています。
しかし、10年後の政権や世界がどのような意思決定をしているのかわからない状況で過剰に反応することは得策ではないと考えております。

海外進出で得たもの

海外進出のメリットをどのように感じていますか?

2点あります。一つは派遣した幹部が経営者人財に育ってくれたと思っています。
もうひとつは海外子会社からの配当金に対して国の施策として5%しか税率がかかっていない分キャッシュフローが改善されました。